シナリオテストとは？実務で使えるテンプレートと手順を図解で解説

はじめに

Web制作において、品質の高いWebサイトやアプリケーションを提供することが求められます。しかし、開発したサイトやアプリが期待通りに動作しなかったり、ユーザーにとって使いづらかったりすると、ビジネスに悪影響を及ぼすことがあります。そのため、開発者は品質保証を徹底し、テストを行う必要があります。

その中でも、シナリオテストはWeb制作における重要なテスト方法の一つです。あらかじめ用意したテストシナリオに基づいて、システムの動作確認を行う方法です。このテスト方法は、ユーザー視点での動作確認が可能であり、Webサイトやアプリケーションの品質向上につながります。

本記事では、Web制作におけるシナリオテストについて、その概要や手順、メリット、そしておすすめのツールについて解説します。Web制作において品質保証を徹底し、ユーザーにとって使いやすいWebサイトやアプリケーションを提供しましょう。

シナリオテストの概要

シナリオテストとは

Web制作におけるシナリオテストとは、Webサイトやアプリケーションの動作確認を、あらかじめ用意したテストシナリオに基づいて行うテスト方法です。シナリオテストは、ユーザーがWebサイトやアプリケーションを使用する場合のシナリオをあらかじめ作成し、そのシナリオに従って動作確認を行うことで、実際の使用環境に近い形でテストを行うことができます。

Web制作において、シナリオテストは品質保証の重要な一環です。テストシナリオをあらかじめ作成しておくことで、テストの漏れを防ぎ、効率的かつ網羅的なテストが可能になります。また、シナリオテストではユーザーの操作を想定した動作確認ができるため、ユーザーが抱える問題を事前に発見し、改善することができます。

シナリオテストは、Webサイトやアプリケーションの品質向上に大きく貢献するテスト方法です。Web制作において、品質の高いWebサイトやアプリケーションを提供するために、シナリオテストを積極的に活用することをおすすめします。

シナリオテストの種類

シナリオテストには、以下のような種類があります。

ユーザーストーリーテスト（User Story Testing）
ユーザーストーリーテストは、ユーザーがWebサイトやアプリケーションを使用する際にどのような操作を行うかを想定して、テストシナリオを作成するテスト方法です。ユーザーストーリーテストでは、ユーザーが抱える問題を事前に発見することができるため、品質の高いWebサイトやアプリケーションを提供するために重要なテスト方法です。
フロー（画面）テスト（Flow Testing）
フロー（画面）テストは、Webサイトやアプリケーションの画面遷移や機能の動作を確認するテスト方法です。テストシナリオを作成し、シナリオに従って各画面の操作を行うことで、画面遷移や機能の動作確認を行います。
バグチェックテスト（Bug Checking Testing）
バグチェックテストは、Webサイトやアプリケーションのバグや不具合を見つけるテスト方法です。テストシナリオを作成し、シナリオに従ってWebサイトやアプリケーションを使用することで、バグや不具合を発見し、修正することができます。

以上が、Web制作におけるシナリオテストの主な種類です。Webサイトやアプリケーションの目的や特性に応じて、適切な種類のシナリオテストを選択することが重要です。

シナリオテストの手順

図：シナリオテスト実施の全体フロー – 不具合が見つかった場合は修正後に再テストを実施

テストシナリオの作成方法

テストシナリオの作成方法は、以下の手順で行うことができます。

ユーザーストーリーの洗い出し
まずは、Webサイトやアプリケーションを使用するユーザーの行動や目的を洗い出します。これを「ユーザーストーリー」と呼びます。例えば、「商品を検索し、カートに追加する」「新規登録を行う」「ログインする」などがユーザーストーリーの一例です。
ユーザーストーリーからシナリオを作成
次に、各ユーザーストーリーに対して、必要な操作手順を明確にします。この操作手順を基に、テストシナリオを作成します。例えば、「商品を検索する場合」のテストシナリオは、「検索バーに商品名を入力する」「検索ボタンをクリックする」「検索結果が表示されることを確認する」といった具合です。
シナリオの詳細化
作成したテストシナリオをもとに、より詳細な操作手順を洗い出します。例えば、「検索バーに商品名を入力する」操作では、どのような文字列を入力するか、大文字・小文字を区別するか、などを明確にします。こうすることで、テストの精度を向上させることができます。
テストデータの作成
テストシナリオで必要なデータを用意します。例えば、「ログインする」操作の場合、テスト用のアカウント情報を用意する必要があります。また、テスト用データは複数用意することで、異なる条件下でのテストを行うことができます。

以上が、Web制作におけるテストシナリオの作成方法の一例です。テストシナリオの作成には、ユーザー視点での操作を想定し、詳細な手順を明確にすることが重要です。

テストケースの作成方法

テストケースの作成方法は、以下の手順で行うことができます。

テストケースの目的を定義する
まずは、テストケースが何をテストするかを明確にします。例えば、「ログイン機能の正常動作を確認する」、「商品購入機能の異常動作をテストする」など、具体的な目的を定義します。
テストケースを作成する
目的を明確にしたら、次にテストケースを作成します。テストケースは、入力や操作、期待結果などが明確に記載されたドキュメントです。例えば、「ログイン画面に遷移し、IDとパスワードを入力してログインする」といった具体的な手順を定義します。
テストケースの詳細化
作成したテストケースをもとに、より詳細な操作手順を洗い出します。例えば、「IDを入力する」といった操作では、どのような文字列を入力するか、大文字・小文字を区別するか、などを明確にします。こうすることで、テストの精度を向上させることができます。
テストデータの準備
テストケースで必要なデータを用意します。例えば、「ログインする」操作の場合、テスト用のアカウント情報を用意する必要があります。また、テスト用データは複数用意することで、異なる条件下でのテストを行うことができます。
テストケースのレビュー
作成したテストケースは、他のメンバーにレビューしてもらい、不備や抜け漏れがないかを確認します。レビューによって、テストケースの品質向上や、不具合の発見が期待できます。

以上が、Web制作におけるテストケースの作成方法の一例です。テストケースは、シナリオや要件を基に、具体的なテスト手順を定義することで、品質向上や不具合の発見に役立ちます。

テスト実施の流れ

シナリオテストの実施の一般的な流れは、以下の通りです。

テスト計画の策定
シナリオテストを実施する前に、テスト計画を策定します。テスト計画には、テストの目的、範囲、方法、スケジュールなどが含まれます。また、テストの実施に必要なリソースやツール、担当者なども明確にします。
シナリオの作成
テスト計画をもとに、テスト対象となるシナリオを作成します。シナリオとは、特定の機能や操作を想定したテストシナリオであり、具体的な手順や期待される結果が記述されています。
テスト環境の構築
シナリオテストを実施するためには、適切なテスト環境を構築する必要があります。テスト環境には、テスト対象のWebアプリケーション、テスト用データ、テスト用のハードウェアやソフトウェアなどが含まれます。
テストの実施
シナリオテストを実施します。実施する際には、シナリオに従ってテストを実施し、予期せぬ問題や異常がないかを確認します。問題が発生した場合は、その内容や発生箇所、再現手順などを記録し、バグレポートを作成します。
不具合の報告
テストの実施後には、発見した不具合を報告します。報告された不具合は、開発者が修正し、再度テストを実施します。修正が完了したら、再度テストを実施し、問題がないことを確認します。
テスト報告書の作成
テストの実施結果をまとめたテスト報告書を作成します。報告書には、テストの実施内容、発見した不具合の内容や修正状況、テスト結果の評価などが含まれます。

以上が、Web制作におけるシナリオテスト実施の一般的な流れです。テストの品質向上や不具合の発見に役立つ、正確で効果的なテスト実施が求められます。

シナリオテストのメリット

シナリオテストのメリットは以下の通りです。

品質管理：
シナリオテストにより、Webサイトの機能やパフォーマンスが要件に適合しているかどうかを確認できます。これにより、品質管理が向上し、問題が発生する前に修正できます。
ユーザーエクスペリエンス（UX）の改善：
シナリオテストにより、ユーザーがWebサイトを使用する際に遭遇する可能性のある問題を特定できます。これにより、UXを改善し、顧客満足度を高めることができます。
コスト削減：
シナリオテストにより、問題が発生した場合に迅速に特定し、修正することができます。これにより、コストを削減し、開発プロセスの効率を向上させることができます。
チームのコラボレーション：
シナリオテストにより、チームメンバーが同じ目標に向かって協力し、作業を調整できるようになります。これにより、チームのコラボレーションが向上し、開発プロセスが円滑に進むようになります。
リスク管理：
シナリオテストにより、Webサイトの品質に関するリスクを特定できます。これにより、リスクを管理し、問題が発生した場合に迅速に対処することができます。

以上のように、シナリオテストはWebサイト制作において非常に重要な役割を果たします。

実務で使えるシナリオテストのテンプレート

実務でそのまま使えるシナリオテストのテンプレートを、具体的な例とともに紹介します。プロジェクトの特性に合わせてカスタマイズしてご利用ください。

ECサイトの商品購入シナリオテスト

ステップ	テスト内容	期待される結果
1	トップページにアクセスする	トップページが正常に表示される
2	検索バーに「ノートパソコン」と入力	サジェストが表示される
3	検索ボタンをクリック	検索結果一覧が表示される
4	商品をクリックして詳細ページへ遷移	商品詳細が表示される（価格、在庫、説明）
5	「カートに追加」ボタンをクリック	カートに商品が追加され、確認メッセージが表示
6	カートアイコンをクリック	カート内容が表示される（商品名、数量、小計）
7	「購入手続きへ」ボタンをクリック	購入手続きページへ遷移
8	配送先情報を入力	入力フォームが正常に動作する
9	支払い方法を選択（クレジットカード）	支払い方法が選択できる
10	「注文を確定」ボタンをクリック	注文完了画面が表示され、確認メールが送信される

ログイン機能のシナリオテスト

ステップ	テスト内容	テストデータ	期待される結果
1	正常なログイン	ID: test@example.com PW: Pass1234	ログイン成功、マイページへ遷移
2	誤ったパスワード	ID: test@example.com PW: WrongPass	エラーメッセージ表示「IDまたはパスワードが間違っています」
3	存在しないID	ID: none@example.com PW: Pass1234	エラーメッセージ表示「IDまたはパスワードが間違っています」
4	空のID入力	ID: (空白) PW: Pass1234	エラーメッセージ表示「IDを入力してください」
5	空のパスワード入力	ID: test@example.com PW: (空白)	エラーメッセージ表示「パスワードを入力してください」
6	パスワードの表示/非表示	PW: Pass1234	アイコンクリックでパスワードが表示/非表示切替
7	「ログイン状態を保持」チェック	チェックON	ブラウザを閉じても次回自動ログイン
8	パスワードリセットリンク	「パスワードを忘れた方」クリック	パスワードリセット画面へ遷移

このように、正常系だけでなく異常系（エラーケース）も含めてテストシナリオを作成することで、より堅牢なWebサイトを構築できます。

シナリオテストのおすすめのツール

Web制作におけるシナリオテストのおすすめのツールとしては、以下のようなものがあります。

Selenium：
Webアプリケーションの自動化ツールで、さまざまなブラウザと言語で使用できます。
TestComplete：
Web、デスクトップ、およびモバイルアプリケーションを自動化するための統合ツールです。
Katalon Studio：
オープンソースの自動化テストプラットフォームで、Webアプリケーションのテストに特化しています。
Cypress：
JavaScriptで書かれたオープンソースのエンドツーエンドのテストツールで、モダンなWebアプリケーション向けに設計されています。
Testim：
ビジュアルテスト自動化プラットフォームで、機械学習を使用して自動化テストを高速化します。

以上のツールは、Web制作におけるシナリオテストに役立つものであり、自動化テストに向いているものもあります。利用目的に合わせて選択することが重要です。

まとめ

Web制作における品質保証に欠かせないシナリオテストについて、その概要や手順、メリット、おすすめのツールを解説しました。シナリオテストを活用することで、より高品質なWebサイトやアプリを制作し、ユーザーに満足度の高い体験を提供しましょう。